あやまちの匂いをかげ

私が彼女の家の居間で軽く夢を見かけたころ。
消滅する夏草のような面影で、
トマトフィジーは私の前を倒れた。
『私の思っていたのとは違っていたみたい』
それはそれぞれの理想とする二人のかたちや内容の違い、
繊細で絶望的な問題だった。
彼女の恋愛が魔法のように溶かされ(または こわれ)、
氷の溶ける温度で受話器は、
意地悪な貴公子の頬だった。
そのようにつめたく意味のない味に似ているなと思った。
彼のしあわせを呪うことすら愛情表現なのは、
トマトフィジーの胸の真ん中に哀しく咲く花の色みたいに赤く、
燃えてるよりも熱く空しいことだった。
『明日の自分の行方についてさえ分からないこの思考と身体が
彼一人だけに幾度でも恋愛を感じることができるかもしれない』のは、
現実とか幻想だとかとはまったく触れ合わない別の場所で、
情熱的だと言って許したい。